まーちんのコーヒーと映画:かもめ食堂の美味しい淹れ方の秘密
はじめまして、ベースコーヒースタッフのまーちんと申します!好きな物はコーヒーと映画です。
世界中でたくさんの人が毎日コーヒーを飲んでいます、それはフィクションの世界でも変わりません。
いろいろな物語にコーヒーは登場し、時には重要な小道具であったりします。どのような形で出ているのか、どのような意味合いが込められているのか「フィクションの世界におけるコーヒーに注目してみよう」という考えから生まれたのがこの「コーヒーと映画」に関するコラムシリーズです!
時にはコーヒーがそんなに関係なくなってしまったり、私の趣味や個人的意見が入ってしまうこともあるかもしれませんがご了承ください。
ということで、「まーちんのコーヒーと映画」シリーズ第一弾は、2006年公開の日本映画『かもめ食堂』についてです!
【目次】
『かもめ食堂』のあらすじ
2006年公開、荻上直子監督作品の『かもめ食堂』はフィンランドを舞台に、ゆったりとした人々の交流を描くヒューマンドラマです。
そんな『かもめ食堂』のあらすじは…
舞台はフィンランド・ヘルシンキ、小林聡美さん演じるサチエは日本食の食堂「かもめ食堂」をオープンさせも、なかなかお客さんがやってこない日々を送っていた。
そんなある日、日本オタクの青年トンミが初めてのお客さんとして来店し”ガッチャマン”のテーマソングの歌詞を教えてくれと言われるが、なかなか思い出せないサチエ…
同日にたまたま出会った片桐はいりさん演じるミドリに、思い出せなかったガッチャマンの歌詞を尋ねたことをきっかけに知り合い、ミドリもかもめ食堂で働くことになる。
サチエ、ミドリ、常連になったトンミの3人がゆったりと過ごすかもめ食堂に、次第にいろいろな事情を抱えた人たちが集まっていき、徐々にお客さんが増えていくのであった…
…といったもの。
食堂を中心に物語が進むこの映画において、おにぎりやシナモンロール、そしてコーヒーと言った食べ物は物語の重要なアイテムです。
『かもめ食堂』でのコーヒー
『かもめ食堂』においてコーヒーは、サチエとフィンランドの人々を繋ぐアイテムとしての効果を持ちます。コーヒーがそうした役割を持つのは大きく分けて2つ…
一つ目は青年トンミとのつながりを…
ガッチャマンがきっかけでお店に訪れるトンミですが、お客さん第一号である彼にサチエは、ずっとコーヒーを無料で提供することを約束します。
それ以降毎日無料のコーヒーを飲みにトンミはかもめ食堂に通い続けることになり、新メニューの開発や、人々がさまざまな悩みを抱え訪れる場に立ち会うことになるのです。
もう一つは、突然現れた男性マッティとのつながりです…
ある日、かもめ食堂を訪れたマッティはコーヒーを一杯オーダーし、「悪くはないが、もっとおいしい淹れ方を教えようか」とサチエにコーヒーの淹れ方を教えます。
湯を注ぐ前に、真ん中に指を指しくぼみを作り「コピ・ルアック」と呪文を唱えるマッティの淹れたコーヒーはとても美味しくサチエは感動します。
サチエも同じように呪文を唱え淹れたコーヒーをミドリに飲ませると「豆を変えたんですか?」と驚かれ、その後他のお客さんもおいしそうにコーヒーを飲むシーンが印象的です。
マッティはその後ちょっとした理由からある問題を起こすのですが…それは見てのお楽しみということで…
フィクションに関係なく、フィンランドではたくさんのコーヒーが飲まれています。
1日に1人当たり平均して約4杯のコーヒーが飲まれているフィンランドでは、朝にコーヒーを飲み1日をスタートさせ、仕事の合間にはコーヒーで一息いたりと、多くの人にとってコーヒーは日常に欠かせない物です。
『かもめ食堂』でも多くのお客さんが食堂でコーヒーを飲んでいるシーンを観ることができます。
マッティの美味しいコーヒーの淹れ方について
かもめ食堂の作中内でとても印象的な、真ん中に指を指し「コピ・ルアック」と呪文を唱えるマッティのコーヒー抽出ですが、「なぜ真ん中にくぼみをつけるのか?」、「コピ・ルアックとは?」そんな疑問を持った方もいるのではないでしょうか?
ここではそれらの理由を簡単に説明したいと思います。
なぜマッティはくぼみを作ったのか?
実のところ、くぼみを作っても作らなくても、コーヒー抽出に慣れている人が淹れた場合、味わいに差はありません。
ではなぜくぼみを作るのか?それは目印になるからです。
コーヒーを淹れる時、500円玉程度の円を「の」の字を描くように真ん中に注ぐというポイントが重要になります。
そうすることにより、ドリッパーにセットされている全コーヒー粉からバランスよく成分を抽出することが可能となります。
つまりは真ん中に注ぐことで、ある部分からは成分がたくさん抽出されているのに、他の部分からはあまり抽出されていないという抽出ムラを防ぐことができるのです。
ここで、マッティのくぼみに話を戻しましょう。
事前に作ったくぼみが目印となり、1投目から真ん中にお湯を注ぎやすくなり、同じ場所をめがけ2投目以降も注ぐことで、真ん中にお湯を注ぎ続けることができます。
つまり、マッティのくぼみはコーヒー抽出にあまり慣れていない人が安定してコーヒーを淹れれるちょっとした裏技みたいなものなのです。
ハンドドリップを始めたばかりの方や、お湯を上手に真ん中に注げないという方はマッティのように真ん中にくぼみを作ってみるといいかもしれませんね!
呪文のコピ・ルアックとは?
くぼみを作る時に唱える、コーヒーがおいしくなる呪文「コピ・ルアック」、実はこれは現存するあるコーヒー豆の名前なのです。
「コピ・ルアック」は幻のコーヒーと呼ばれるほど流通が少なく希少価値の高いコーヒーとされていて、名前の「コピ」はインドネシア語で「コーヒー」、「ルアック」は「マレージャコウネコ」の呼び名です。
その製法は、完熟したコーヒーチェリーを食べたジャコウネコ排泄物から採られる未消化のコーヒー豆を集めた物です。
ジャコウネコが食べるのは完熟したコーヒーチェリーのみ、それに加え腸内の消化酵素によってコーヒーに独特な風味が加わり、絶妙な味わいになるとされています。
その独特な製法から興味を引き、コーヒー好きの多くが一度は飲んでみたいコーヒー、それがコピ・ルアックなのです。
マッティの呪文にはコピ・ルアックのように美味しくなれという想いが込められているのかもしれませんね。
ゆったりした雰囲気の中、あまり何も考えずに観れるのがこの『かもめ食堂』です。
ちょっと映画でも観てリラックスしたいという方はぜひ観てみてください、きっとあなたも観終わった後はコーヒー粉に指を立て「コピ・ルアック」と唱えていることでしょう。