まーちんのコーヒーと映画:『大脱走』戦時中のコーヒー
最近うれしかったことは、自分が淹れたコーヒーが一番好きだと言ってもらえたこと!スタッフのまーちんです!
映画に出てくるコーヒーに注目するコラムの第5弾、今回は少し昔の映画から…
ご紹介するのは1963年公開の洋画、『大脱走』です。
軽快なテーマ曲や、渋い俳優の集まる男の映画として有名なこの作品においてコーヒーはほんの少ししか出てきませんがとても印象に残る登場の仕方をしています。
私のお気に入り映画の一つである『大脱走』におけるコーヒーをご紹介します!
シリーズ第4弾の『コーヒーが冷めないうちに』に関してのコラムはこちら→『コーヒーが冷めないうちに』のコーヒーと温度
【目次】
『大脱走』のあらすじ
『大脱走』(原題:The Great Escape)は1963年公開のジョン・スタージェス監督代表作で、実話をもとに作られた、戦闘シーンのない戦争映画です。
そんな『大脱走』のあらすじは…
舞台は第二次世界大戦中のドイツ。とある捕虜収容所には多くのイギリス、アメリカ兵が捕らえられていた。絶え間なく発生する脱走に手を焼いていたドイツ軍は、この新設の収容所に脱走常習犯を集め、鉄壁の警備を敷きまとめて監視しようと目論んでいた。
「収容所からの脱走は不可能。無駄なあがきはやめ、おとなしくしていろ。」と所長は忠告されるも、捕虜となった兵士の任務は、「脱走して少しでも敵軍に混乱を招くこと」そう簡単にあきらめるわけにはいかない。
幸いにも収容所に揃っているのは幾度となく脱走を繰り返してきた強者たち、情報屋や偽装屋、
トンネル掘りといった様々なスペシャリストが集まる彼らは250人の捕虜を脱走させる、前代未聞の大脱走計画を実行するのであった…
…というもの。
表向きは収容所で静かに暮らしている裏で着々と脱出計画が進んでいく緊張感や、ところどころに織り込まれるコミカルな和みのある雰囲気に引き込まれ、約3時間があっという間に過ぎていきます。
スティーブ・マックイーンやチャールズ・ブロンソンといった男らしさあふれる俳優陣のカッコイイ姿も見どころの一つです。
『大脱走』でのコーヒー
実のところ『大脱走』でコーヒーが出てくるのはほんの少しで、実際にコーヒーという液体がちゃんと出てくるわけではありません。しかし、この映画ではコーヒーが一つの課題を解決する一方で一つの計画を壊すことになるのです。
『大脱走』と”コーヒー”を繋げるある登場人物がいます。
それはドイツ軍の看守の一人ヴェルナー、彼のコーヒー好きが脱走を目論む兵士たちにとってプラスにもマイナスにもはたらくのです。
一つの例は、調達屋のヘンドリーが身分証明書を偽装するためのオリジナルを調達するよう言われた時のこと。
彼が目をつけたのが少し抜けている看守のヴェルナーでした。窓の外を眺めているヴェルナーと何気ない会話を始めヘンドリーは巧みに彼に近づきます。
ヘンドリーの「オレの部屋でゆっくり話さないか?」という提案に「捕虜と仲良くしている所を見られると前線に飛ばされてしまうから」と一度は断るヴェルナーですが…
「コーヒーを淹れるよ…本物のやつ…」という一言に負け、結局ヴェルナーはヘンドリーの部屋までついていってしまいます。
その後、ヘンドリーは巧妙な策で彼から身分証明書を財布ごと盗み出すことに成功するのでした。
もう一つが、脱走用のトンネル完成間近の7月4日、アメリカ独立記念日でのことです。
アメリカ兵のヒルツ、ヘンドリー、ゴフは収容所のみんなに芋焼酎をふるまい記念日を祝います。
捕虜のみんなが広場に集まりお祭り騒ぎをしている中で、がら空きになった宿舎をヴェルナー含むドイツ兵たちが、怪しいものはないかと見回りをしていきます。
隠しトンネルがある部屋も調べらますが、白だと判断されてドイツ兵たちは何事もなく撤退…していくかと思いきや、一人部屋に残ったヴェルナーは他のみんなが出たのを確認し、こっそり部屋にあるコーヒーに手を伸ばします。
ふとした拍子にコーヒーをこぼしてしまうヴェルナー、何もないはずの床からコーヒーが流れ落ちていく音が聞こえトンネルに気づくのでした。
『大脱走』に見る戦時中のコーヒー
『大脱走』ではヴェルナーがコーヒーのために規則を破る姿や、人の目を割けて捕虜が持っていたコーヒーを飲もうとする姿を見ることができますが、なぜそこまでしてコーヒーを飲みたがるのか…
これには、戦時中のコーヒー事情が関係しています。ここでは第二次世界大戦中コーヒーがどのような物であったかをご説明します!
ヴェルナーがコーヒーを飲みたがるわけ
ヴェルナーがコーヒーを我慢できないのには戦時中のコーヒー供給事情が関係しています。
第二次世界大戦中のドイツではコーヒーそう簡単に飲むことができる物ではなかったのです。
その理由の一つが、アメリカが中南米諸国との協定を結んだこと…
大戦がはじまると、アメリカと中南米のコーヒー生産国の間で「アメリカが各国からコーヒーを一定価格で買い取る」という協定を結ばれます。大きな目的は両国の結束を強めるといったものでしたが、この結果中南米諸国から枢軸国へのコーヒー輸出が制限され、ドイツを含む枢軸国ではコーヒーを簡単に手に入れることができなくなってしまったのです。
そしてもう一つが、コーヒーが軍によって徴用されていたということです…
第二次世界大戦中、どの国でもコーヒーは徴用されていました。その目的は前線で戦う兵士に支給するためで、覚醒作用や興奮作用が兵士たちの眠気を防止したり、疲労感を低減しました、また安らぎを与えストレス軽減にも役立っていたのです。
兵士ではない人々や、兵士であってもヴェルナーの様に前線では戦っていない人々にとってコーヒーはなかなか手に入ることができない贅沢な物だったのです。
ちなみに、コーヒーの徴用はアメリカでも起こっていて国民へ配給されるコーヒー豆は十分な物ではありませんでした。
少ない豆でいかにコーヒーを作るかを工夫し、薄めに淹れるようになったのが「アメリカンコーヒー」が普及した理由の一つだと言われています。
ニセ物のコーヒー
ヴェルナーを誘う時、ヘンドリーは「本物のコーヒー」があることを強調します。
本物を強調する理由は当時コーヒー豆以外から作る代用コーヒー、いわば偽物のコーヒーが一般的だったからです。
戦時中コーヒー不足に悩まされ、どうしてもコーヒーが飲みたかった人々は、コーヒー以外の物で味を似せた代用品を生み出し飲んでいました。
有名な物としては…
灰汁を抜いたどんぐりを焙煎し抽出した、どんぐりコーヒーやたんぽぽの根っこを焙煎し抽出した、たんぽぽコーヒー。キク科の植物チコリを用いたチコリコーヒーなどがあります。
大戦中は代用品として飲まれていたこれらのコーヒーですが、現在でも一部で飲まれていて、今ではコーヒーの代用というより一つの飲み物として愛飲されていることの方が多いようです。
観ていてとっても引き込まれる映画『大脱走』。捕虜となった彼らは無事脱走することができるのか…観たことのない方はぜひ観てみてください!
そしてヴェルナーがどれだけコーヒーに熱を向けているかに注目してみてくださいね。